2013年8月28日水曜日


 現代では着物に靴を合わせる上級着こなしを披露するつわものもいるようですが、やはり着物によく似合う履物は雪駄(セッタ)下駄(ゲタ)です。
そして男のおしゃれは足元からというセオリーは着物も同じく、履物で見栄えはかなり変わります。

とはいえ、こだわればきりがないのも靴と同じなので、ここはブログのポリシーに従い、安くて素人にやさしいものから紹介します。


まず、商店街の古い履物屋に行ってみましょう。
靴屋ではありません。"履物屋"です。歴史のある古い商店街にはたいてい一軒はあります。

すると、店頭に数千円のものが、天井から字のごとく「吊し」で売っているはず。基本的にはこれでOKです。
この場合、M/L/LLなどおおまかなサイズから足袋ばきの足に合わせて選ぶことになり、鼻緒と足の甲のフィット感が若干きつく、かかとが土台からやや外にはみ出る程度のサイズがかっこいいとされています。

ここで一つ注意。
雪駄を固定する鼻緒は履いてるうちに若干伸びてくるので、少しキツ目のものを選ぶのですが、それでも限界があり、無理に履いていると足を痛めてしまうことがあります。
そんなときは履物屋さんに、足裏の溝から鼻緒を「すげ」て調整してもらうのですが、吊るしの雪駄は高い確率で「すげ」のための溝が省略されて作られているため、鼻緒の調整が利かない場合があるのです。

もちろん既成の状態で鼻緒がジャストフィットしているなら「すげ」は不要ですが、「すげ」がきくものであれば万が一足のサイズに合わなかったとしても安心。
その見分け方は、裏地の親指/人指の間および土踏まず/かかとの間に二箇所にめくれるような溝が付いているかどうかです。(下図参照)

「すげ」が利くものになると、吊しではなく箱入りになっている事が多く、値段もワンランク上だったりします。土台の質もいいし、場合によっては鼻緒そのものを別に気に入ったものに「すげ」替え、長く使うことができます。こういうものを探すときは、履物屋さんに直接尋ねるか、着物屋さんに行くといいでしょう。

どちらが良い悪いということはありません。
履物は着物に比べて消耗品的な性格なので、吊しから安いものを選んで繰り返し経済的に履いてもいいし、品もサイズも自分に合った一足にこだわるのも自由です。

その他のメンテナンスとしては、裏地の減りの早いかかと部分の定期的くらいでしょうか。
どちらも履物屋さんでやってもらえるはずなので、購入の際は問い合わせてみてください。

なお、鼻緒の擦過傷はサイズが合っていても起こることがあるので、ミニサイズの絆創膏を持っていれば怖いものなしです。

もっとこだわりたい場合は、鼻緒と土台の部分を別々にオーダーし、足に合わせて職人さんに「すげ」てもらいます。着物でいう「誂え」ですね。
当然値段も青天井ですが、そういう履物にはびっくりするような個性を放っているものがあり、いつかこういう一足が欲しいと思いながら僕もたまに高級店を覗いています。

一方、下駄については構造上、ほぼすべての品物が鼻緒を取り外せるようになっているので「すげ」に関する心配は無用です。
値段も雪駄に比べると安く、1000円くらいからたくさん出回っているので非常にお手頃。
浴衣に合わせる夏仕様というイメージがありますが、雨天時は水に弱い雪駄の代わりに履くこともできるスグレモノです。
「歩くと音が鳴る」ため、ホテルなど、静かでかしこまった場には履いていけないことにだけ注意。

雪駄とともに一足ずつ財布と相談しながら選んでおけば、とりあえず通年の履物には心配要りません。