街を歩いていると、ふだん着物を取り扱わないような衣料品店にもずらずらと浴衣がディスプレイされ始めましたね。
普段着物を着ない人々もこの時期には浴衣に進んで袖を通します。ある意味、現代における着物の季節と言っていいでしょう。
では浴衣ってなんだろう?
それをちょっと調べてみました。
浴衣はそもそも「湯帷子(ゆかたびら)」といって、水浴びや湯浴みの際に着たものらしいです。江戸時代以前は今でいうサウナのような蒸し風呂が一般的だったので、素っ裸である必要はなかったんでしょうね。
というわけで、後年になっても浴衣は朝夕の部屋着としての扱いでした。現代でいうパジャマです。だから旅館や民宿では寝間着によく使ってるんですね。
ポイントとしては、そんな由来から着物の中では最も格が低く公式な場には一切着て行けないってことです。
若い女の子が一昔前まで考えられなかったくらい肌をまろび出して街を闊歩しても誰も変だと思わないこの時代では、浴衣も夏のお出かけファッションとして認知認められているためカジュアルに限ってはおおっぴらに外を歩くことができますが、立ち位置としてはジーンズファッションみたいなもの。ドレスコードがあるようなレストランや行事には不適切です。
でも浴衣と普通の着物って見た目はそんなに違わないように見えますね。どこが違うのでしょうか。
妻に訊いたところ、"単衣(ひとえ)"と呼ばれる最も単純な着物と作りは変わらないとのこと。
違うとすれば素材くらいらしいです。浴衣には、綿・麻・ポリエステルが用いられ、絹で作ったものは浴衣と呼ばずに「夏着物」と位置づけられます。
浴衣は長着と帯とゲタの三点でOKですが、夏着物の場合は他のシーズンと同じく長着の下に襦袢を着、足袋も履くとのこと。
その代わり、後者は浴衣よりも格上なのでいろんな場への出入りできます。
夏にアウトドアで遊んだり散歩する程度なら浴衣。ある程度かしこまった場に行くなら夏着物という具合に使い分けるとスマートですね。
でも構造が"一重"と同じであるなら、綿・麻・ポリエステルで作られた「着物」と違わないのでは?というとこれもちょっと違うみたいです。
そこはもう少し詳しく調べてみました。例の早坂伊織さんの本で!
厳密にはここでは割愛しますが、染め方や細かい仕立て処理で「浴衣」と「着物」にはやはり明確な違いが存在しているようなんです。
一重の着物とそんな大きな違いがないのなら冬に着ても同じように見える、と思うかもしれません。僕もそう思ってました。
そこで想像してみてください。お相撲さん(特にまだ新人た付き人くらいの)が普段着ているのって浴衣なんですが、アレが着物と同じかっていうと、やっぱり見た目からなんか違うと思うんですよ。
模様でしょうか?あるいは襦袢や足袋がないから?
うまく説明できなくても、やっぱりどこか違和感を感じますよね。
決して悪いってわけじゃないけど、冬に浴衣を着るというのは冬に半袖の薄着で出歩くような違和感があるんです。主にそれを見る周囲の人間が。
着物には「周囲に不快な印象を与えてはいけない」という意義が存在します。
自分は良くても周囲に変だと思われる身勝手な着こなしは、着物においては避けたいものです。
とはいえ、現代ではそれすら斬新な着こなしとして遊べる可能性があります。
作家の鴨志田直樹さんは、着物ライフの中で色々試した結果、年中浴衣を愛用しているということです。涼しくなってくると、その下に襦袢やタートルネックなどを重ね着するそう。
浴衣生地は洗濯もしやすいし軽いので、普段着としては最適なのかもしれません。
それに浴衣というのは市場的に男性物もいろんな種類が手頃に売りだされていますから、本当に練習として着つぶすにはもってこい。
古着屋さんでは僕の経験上、最安で500円からある、最も初心者向けの品なんです。
この夏、浴衣への造詣を深めた上で、改めて着物の入門としてチャレンジしてみませんか?
2013年8月2日金曜日