そんなわけで、今から着物を始めるには単衣着物(裏地のない涼しい着物)を選ぶことになりますが、浴衣に対して「着物」はちょっとお値段が張るもの。
そこに腰が引けぬよう、前回の購入手引の続きとして、今回は予算を優先した着物購入のコツをご紹介したいと思います。
注目するのはリサイクルの着物を扱っているお店。
中古衣類というとどこか安っぽいイメージがありますが、新品と比べると文字通り桁外れの安さとなることがあり、また、着物はもともと古い時代のものなので、リサイクルでしか手に入らないものもたくさんあるので玄人も注目している市場なのです。
おすすめのお店は、たんす屋さんか福服さんです。
たんすやさんは全国にチェーン展開しているので、お住まいの地域から近いお店を見つけやすいのが利点。たまに百貨店で大々的にリーズナブルなリサイクル着物のセールを行ったりもしています。
男物は「あまり売れない」という理由で店頭に男物を出していない場合があり、予め電話で男物があるかどうかを訊いてしまうのが確実でしょう。
福服さんは首都圏のみのチェーン展開で店舗こそ少なめですがリサイクル中心の品揃えと安さはダントツ。「日本一敷居の低い着物屋」を自らうたう通り、ド素人も気兼ねなしに入れる店構えです。男物は赤坂店に集まっていてサイズも在庫も豊富。
さらになんと、福服さんは学割を採用しており、学生さんは一律二割引という若者にやさしい価格設定なのです!
そのほかの普通のお店でもたんす屋さん同様に、売れ行きの事情やディスプレイ節約のために男物は倉庫に入れっぱなしという場合が割と多く、問い合わせることで奥から出してきてくれることも。
率直に「この店で一番安いやつ」と所望してしまうのも手です。
■長着 素人重視度:★★★★☆
まず、着物五点セットの中で最も高い長着を妥協することで、総予算は大きく下がります。よく見かけるのは3000円~8000円の価格帯。
リサイクルや在庫品の場合は体に合うかどうかが一番のネックだと思うので、値段とサイズの2つの要素の合致点を探ることになるでしょう。
たまに1050円くらいのとんでもなく安い品もあります。これらには色あせや大きめのダメージがあったりしますが、練習や体験用として、あるいは「汚れてもいいや」と普段着使いするなどに利用できるので見逃せません。
もう一つの注意点として、冬にしか着れないウール製がこの手の激安長着によく混じっているため、暖かいシーズンに使いたい場合は素材の確認も必須です。
■襦袢 素人重視度:★☆☆☆☆
実は、襦袢はなくてもかまいまないと個人的には思います。
僕自身、義父から譲ってはもらいましたが、胸元が深く切れ込んでいるVネックとか場合によっては丸首のシャツを下に着ることが多いくらいです。
襦袢の主な目的は防寒と汗とりなので、これを果たせるものなら何かで代用してもいいでしょう。
とはいっても、衿の内側に襦袢のラインが一本入るとピシっとキマって見栄えが違うので、昔の着方そのものを味わいたいのならばいずれは入手したいところ。予算重視の場合のみ、優先度は一番後ということです。
なお、裏地に風雅な絵が描かれているような"粋"な襦袢は長着よりも高価なこともありますよ。
■帯 素人重視度:★★★☆☆
これも「どーしても新品が欲しい!」という前提であった際、ポリエステル製の品の最安値が6000円弱ということで、リサイクルまで範囲を広げると1000円とか、まれに数百円で手に入ることもあるんです。
多いのは3000円台。"献上"という、最もベーシックな模様が施されているものは弾数が多く、安価で使い勝手がいいため一本持っておくといいでしょう。
反面、リサイクルだとどこかにシミがついていたりほつれがあったりもしますのでダメージチェックも忘れずに。
帯はその面積のほとんどを重ねて巻いてしまうため、シミがあっても見えなくなることもあります。つまり注目するのは結びに使う両端。ここの汚れは隠しきれません。僕の持ってるものの中には前の持ち主の名前がマジックペンで書かれているものがあります(笑)
とはいえ、帯については断裂などのよほど大きな破損がない限りは大した目利きがいらないので、骨董市で安くて面白い柄を見つけたらサクッと買っちゃってもいいですね。
なお、今回は着付けを覚えることも目的としているので、作り帯(結びが縫製されているもの)は除外します。
■足袋 素人重視度:★★☆☆☆
足袋は消耗品なので、綿であれば1000円以下で手に入ります。白黒一足ずつ持っていると着物に合わせることに悩みません。
結構使えるのが500円以下で手に入る文化足袋(二股指の靴下)。文化足袋は模様があしらわれているので、色々面白く着こなせます。
■履物 素人重視度:★★★★★
そして最後に雪駄あるいはゲタといった履物です。
これが少し難しい。履物の解説でお話したとおり、その人の足に合うかどうかで高くも安くもなり、靴同様、特殊なケースを除いては中古市場にもあまり流れないので、五点セットの中では最も値段が削りにくいのです。
ただ、どんな着こなしであっても歩くのが辛いと楽しくないので、履き心地については妥協は絶対禁物。「痛い」と感じるようなものは避けましょう。
1万円あれば「すげ」のできるものを買ってもお釣りがくるとは思いますが、安さ最重視ならば履物屋の店先の吊しから自分の足に合うものを探せば3000円以内で収めることができると思います。
履物の相場は普段洋服に合わせている靴と価格も性質もあまり違わないので、同じ価値観で考えてもらって差し支えありません。
以上です。
これらを最低価格でまとめてみました。
長着 5000円~
襦袢 3000円~
帯 3000円~
足袋 1000円~
雪駄 3000円~
合計1万5000円!
洋服でいうところの上着(シャツ・ズボン)・下着・ベルト・靴下・靴までひっくるめてなら納得行く金額ではないでしょうか。
襦袢を省略したり、長着をもっと妥協できれば「一度自分の着物姿を味わいたい」という希望は1万円以下でかなってしまいます。
大切なのは、まず「着物」を体験することから。
そのための出費はできるだけ抑え、着物の楽しみを感じて更にいいものにステップアップするときまで貯めておきましょう。
ボロは着てても心は錦(ちょっと違うかもしれませんが)です!
【たんす屋】
http://tansuya.jp/
【福服】
http://www.rakuten.ne.jp/gold/fukukimono/
※男着-danchaku-のFacebookページを作りました。
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